〜地盤調査・敷地の履歴調査について〜

●地盤調査の重要性

 建築物を建てようとしている敷地が、建物を支えるだけの強さを持つ地盤なのかどうかは、正確な調査を行わなければ知ることが出来ません。
 土の表面だけを見て判断することは非常に危険であり、問題はそのずっと下の方に潜んでいます。
 以前は木造2階建て住宅の工事の場合、地盤調査など行わずに基礎工事を始めていましたが、現在ではこれらの小規模建築物の場合も地盤調査を行い、安全性を確認してから基礎工事を始めることが多くなっています。


●地耐力の調査

 地盤の良し悪しは、土質・地耐力・周辺の状況・造成の有無と時期・昔の利用のされ方・地下水位など、様々なデータに基づいて専門的に判断されなくてはなりません。
 木造2階建て規模の建物の場合、一般的に言われているのは、3.0t/u以上の地耐力がある敷地なら、問題はないのではないかと言われています。
 しかしこれも以下の条件により判断が変わってきます。

 ・必要な地耐力はどのくらいの深さで得られる数値なのか?

 ・さらに深い部分では地耐力が良くなっているのか、悪くなっているのか?

 ・計画敷地全体に、平均的な数値の地耐力が得られているのか?

 木造2階建て規模の建物の場合、これらは地盤調査の中でも比較的簡単で費用が安価な「スウェーデン式サウンディング」によって調査することが多いですが、浅い部分(5m程度まで)の地耐力しかわかりません。
 よって、重い構造物や規模の大きな建物の場合は、更に土質、支持層の深さ、地下水位 等のデータが必要となる場合があるので、ボーリング等の方法で調査を行います。
 実施設計の段階で行う構造設計に必要なデータです。


●敷地の履歴調査

 更に次の条件は、設計の際に地耐力等の数値以外の重要な要素となります。今までその敷地がどういう使われ方をされていたか、周辺の状況がどうだったかを知る必要があることもあります。

○既存の建物があるかどうか?
既存の建物がある場合には、新しい基礎を古い基礎と同じ深さかそれ以上の深さにしないと盛土部分が発生します。
○造成工事の有無
造成地の場合、新しい造成地か?古い造成地か?切土か盛土か?
盛土の場合、造成工事が終わって数年から十数年の間、地盤の沈下が静かに進む場合があります(圧密沈下)。
盛土は基本的には長期間沈下が続くものと思った方がよいでしょう。 切土なら基本的にその危険性はないと言えますが、たいていの場合造成地は盛土と切土が混在しています。
○田畑等の農業用地だったか?
特に水田であった場合、表土近くの層で極端に地耐力が弱くなったり、そのままだと雨が降ってどろどろになる場合があります。
また通常水田は道路面より低いことが多いので、宅地とするには盛土が必要となるケースもあります。
○周辺状況
平らな土地か、傾斜地か。 周辺に崖等があるか?
○過去の災害
過去に崖崩れや浸水災害がなかったか?
○その他
ガラ・産業廃棄物等が埋まっていないか?
工場跡地等の場合、土壌汚染の可能性もあります。
 等が一般的に考えられます。 状況により判断材料が増える場合もあります。


●敷地と建物のコストパフォーマンス

 建物を建てようとしている敷地がもし軟弱地盤やその他の条件が良くない敷地の場合、基礎工事などに予想外のお金がかかる場合があります。
 コストパフォーマンス(費用対性能)の良い建物を建てたい場合、まず条件の良い敷地が必要となりますが、既に土地がある場合その土地にどのような素性があるのか知る必要があるでしょう。

 建物の構造・階数・用途等によりますが、例えば構造的に軽い木造2階建ての建物を平らな土地に建てる場合には通常、ベタ基礎で計画し、一般的に基礎の深さはそれ程深くする必要はありません。
 もし軟弱地盤の場合には、基礎を深くしたり、基礎の剛性を高めるための工夫をしたり、場合によっては地盤改良工事の必要が出てきたりと、見えない部分にお金がかかることもあります。
 特に「杭工事」や「地盤改良工事」は住宅等の比較的規模の小さな建物の工事にはよほどの悪条件でない限り通常は行いませんが、どうしても必要な場合、工事内容によって工事費用が何百万円とかかる場合もありますので建築主の大きな負担となります。

 重い構造物の計画の場合や、階数が多い計画の場合等は、そこそこの地耐力があっても、杭工事や地盤改良工事が必要となることが多くなります。
 何をどの程度行うかの判断は、地盤調査の結果と構造計画によって実施設計の段階で決定していきます。
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